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交通事故の発生に関する問題について説明いたします。
1.自分では「安全運転しているから大丈夫だろう」と考えがちですが、自分がしっかりしていても巻き込まれるのが交通事故です。
全国で年間63万件、広島県で年間14,000件の発生件数を見れば、いつどこで身にふりかかってもおかしくない数字です。
2.このように確率的に高い交通事故について、事故や保険などの基本的知識が全くない状態で運転するのは、非常に危険です。
私は、企業において安全運転管理者を25年担当し、自動車保険の代理店業 務も行いましたが、事故対応や研修を通じて、様々な経験をさせていただ き、予測運転や防衛運転がいかに大事であるかも教わりました。
学生時代に東京でバイクを運転中、目の前のバイクの方が即死したとい
う事故も目撃し、人間誰でも、一瞬先はわからないと肌で実感しました。
3.初心者の方で防衛運転がよくわからないという方は、資料等でできるだけ多くの事故事例を参考にすることが、役に立つと思います。
幸いにも、まだ事故にあっていない方も過信せず、事故が起こったらどうなるのか、という基本的なことは知っておくべきだと思います。
4.交通事故にあって戸惑うのは、以下のようなことに直面するからだと思います。
① 交通事故発生から治療終了・賠償金受取りで解決するまでの全体の流れが わからない。
② 事故の加害者・警察・治療機関・保険会社と、関係してくる先が多く、精 神的・肉体的にまいってしまう。
③ 被害者であるのに、意外と自分に味方する人・誠意を持って対応してくれ る人が少ないことにショックを受けます。
(加害者・警察・保険会社の対応に、一々感情的になるのは禁物です)
④ 保険の知識はあると自信を持っていたのに、その他の法令などの知識が不 足していて、各制度が複雑に絡み合っている状況に混乱してしまいます。
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・自動車保険・自賠責保険の知識のほか、民法や道路交通法・労災保険・健 康保険の各制度の関係、逸失利益・休業補償・慰謝料の数種の基準・過失相 殺の割合、後遺障害・医学の知識など細かい項目に精通している一般の方は いないのは当たり前です。
特に初めての交通事故の場合は、気も動転して、何をしていいかわからないことが多いものです。
大きな流れを、まず理解しておきましょう。
人命救助と119番の通報 |
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警察(110番)への通報 |
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加害者とその車両の確認 |
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事故現場の状況の確認 |
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警察への届出 |
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保険会社への報告 |
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医師の診察と治療 |
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治療の終了と自賠責請求 |
人命救助と119番の通報
・まず第一に人命救助というのは、教習所で教わることですが、自分自身・同乗者・相手方あるいは歩行者の負傷の状況は様々で、体を動かしてはいけない場合と良い場合など、普通の人では実際には難しい行動ではあります。
最善のことを行ったら、できるだけ早く救急車を呼ぶことです。 警察(110番)への通報
・物損事故であろうと人身事故であろうと、必ず警察を呼ぶことが大切です。
事故が小さいからとか、けがはないだろうといって、間違ってもすぐにその場で別れるのは禁物です。
・警察への通報をしないと、保険金請求手続きに必要な交通事故証明書が発行されないし、警察の捜査もされないので、客観的な証拠もないことになります 加害者とその車両の確認
・被害者となった場合は、今後の賠償請求のために、念のため相手方やその車両を確認します。警察の事故証明書でも確認できますが、出来るだけメモをとっておきます。
・運転免許証から、加害者の氏名・住所をメモし、電話番号を聞いておく。
・名刺あるいは車体から、勤務先名・連絡先を確認する。
・加害車両のナンバー・車種を確認する。
・車両の所有者や管理者が加害者と異なる場合は、その氏名・連絡先を聞い
ておく。
・自賠責保険証および任意保険証券から、保険会社名・証明書番号および連
絡先を確認する。 事故現場の状況の確認
・後日の損害賠償の交渉で不利にならないよう、破損した車両の状況、双方の車両の位置、道路に駐車中の車両の位置、道路・道路標識・信号などの状況を確認します。
・できれば、目撃者がいれば、目撃者の証言や連絡先をメモしておきます。
・最近はスマホがありますから、双方の車両や道路の状況を写真にとっておくこともできます。
警察への届出
・後日、保険会社から人身事故の損害賠償の支払いを受ける際には、人身事故の交通事故証明が必要になりますが、けががあった場合、人身事故として警察に届けていないと、人身事故としての事故証明が発行されません。
・事故の時は何もなくて物損だけで届けた場合も、後日体に何かの症状があらわれた場合は、できるだけ早く診断書を提出して人身事故に切り替えます。 保険会社への報告
① ご自分の任意保険契約会社または保険代理店に、事故の報告をします。
② 自分で保険内容を把握していなくても、保険会社が特約等を調べてくれま すから、レッカー移動とかのサービスも受けられるかもしれません。
③ 保険会社は、1年365日、24時間対応の電話番号が必ずあります。
交通事故は、どういうわけか早朝か深夜、土日・年末年始・お盆休みなど通 常の営業時間以外に発生することが多いのです。
・自分の免許証と一緒に、保険会社の「緊急連絡用携帯カード」を持ってい れば、休日や深夜でも、保険会社の事故担当と会話をし、事故対応の指示 をしてくれるので、精神的に安心できます。
・運がよければ、事故現場が保険代理店と近い場合は、社員がすぐに現場に かけつけてくれて、事故対応の支援をやってくれます。
④ 保険契約の内容によって、人身傷害保険あるいは搭乗者傷害保険に入って いれば、自分に過失がある場合でも、事故の解決を待たずに支払いがありま すから、それも確認しておきます。
⑤ 自分に100%過失がない場合、例えば、信号で停車中に追突された、相手の センターラインオーバーで正面衝突された場合などは、ご自分の保険会社に は賠償責任はなく、本来保険会社が動くことはありませんが、それでも事故 の連絡だけはしておくべきです。
・特に、弁護士費用特約に入っていれば、その対応をしてくれるのですか
ら、その他のアドバイスも含めて、保険会社には連絡しておきます。
⑥ 被害車両の修理や廃車・新車の購入は、人身損害とは別個のことですから
治療と平行して早めに相手側保険会社と交渉することです。
・通院の便宜を図るうえでも、なるべく早く車を運転できる状況に持って
いくことです。
・よくあるケースで、車両の小さな損害でも、「新車に替えてくれなけれ
ば納得しない」と主張される方がいますが、賠償の基本は原状回復という
ことを理解して、ある程度妥協して早く解決された方がいいと思います。
医師の診察と納得のいく治療
① 最初の病院あるいは転院した場合も、医師の指示に従い、納得のいく治療 を受けましょう。
・体が痛いのに我慢したり、仕事が忙しいとの理由で通院をしなかった場 合、治療効果を妨げたり、後日、賠償において、正当に得られるはずの賠 償金が得られなくなる可能性があります。
② 治療費の支払方法を確認します。
・通常は、加害者が自分の入っている任意保険会社に連絡し、その任意保険 会社から被害者に連絡があり、病院の治療費なども直接保険会社から医療 機関に支払われるよう手配されるはずです。
・もし加害者が任意保険に入っていなければ、被害者が治療費を自分で立て 替え、あとで加害者の自賠責保険や加害者本人に請求するか、あるいは被 害者が自分の保険会社に連絡してそちらから医療機関に支払われるように 手配しなければなりません。
・また、被害者の過失が大きい場合は、健康保険を使って治療することも検 討します。
健康保険を使わない治療(自由診療)では、医療費が多額になり、過失 相殺などで差し引かれる金額、すなわち被害者の負担が大きくなってしま う可能性があります。
③ 治療の継続と転院
・転院(通院に便利な病院へ変わる)や接骨院を利用する場合は、医師と相 談し、事前にその都度相手側保険会社に連絡しておきます。
無断で転院等を行うと、無用なトラブルが起きることがあります。 治療の終了と自賠責請求
① 入院あるいは通院の結果、医師の診断と本人の意思でけがが完治したと判 断されれば、保険金請求の段階になります。
・通常は、相手側保険会社から、治療終了の確認の打診と保険金額の提示が あります。
② 事故から大体6ヶ月を経過すれば、完治しているから治療を打ち切るかある いは症状固定で後遺障害申請を検討するか、保険会社からの打診があります
③ 注意しなければいけないのは、治療の打ち切りは、保険会社が独自に判断 していることなので、完治しているか治療継続の必要があるか、あるいは症 状固定の判断は医師と相談しながら被害者本人が行うことであるということ です。
・治療を継続していて症状が改善しているなど、治療効果が上がっている場 合は、医師から保険会社に治療の必要性を説明してもらうことも検討します
④ 保険会社から治療の打ち切りあるいは保険金額の提示があった場合によく ありがちなのが、「事故のことは早く忘れたいしすっきりしたい」「これだ けお金がもらえるなら、今お金に困っているから助かる」、と自分で判断し て手続きや示談を完了した後に、体の異常が再発したり、他の人から明細の 解釈しだいで金額の増額の可能性を指摘されることがあることです。
・示談成立後は、それをくつがえすことは困難ですから、事前に他の人や専 門家に支払明細や根拠を見てもらうことも大切です。 労災保険と交通事故の関係
1. 会社の業務中あるいは通勤途中で交通事故にあい死傷した場合は、自賠責 保険のほかに労災保険の適用がありますが、労災保険には有利な面がありますから、業務中の事故の場合は労災の申請をすべきです。
2. 交通事故の場合、労災給付請求手続きのほかに、「第三者行為災害届」を提出しなければなりません。
3.第三者行為災害によって労災保険が適用されると、国が支払った給付金を加害者または加害者が加入する保険会社に請求します。
4.労災保険の給付内容は次のものがあります。
① 療養補償給付 (治療費の全額)
② 休業補償給付 (治療のため4日以上休業した場合)
③ 障害補償給付 (後遺障害が残った場合)
④ 遺族補償給付 (被害者が死亡した場合)
⑤ 葬祭費
⑥ 傷病補償年金
⑦ 特別支給金
・労災保険には慰謝料の給付はないので、この部分は加害者の保険会社への 請求となります。
・労災保険と自賠責保険は、後遺障害については同じ1~14級の等級表を使 用していますが、両者はそれぞれ独自に認定を行うので、異なった等級認 定が出ることがあります。
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この場合は、低い等級を認定した方に対して、不服申し立てをすること ができます。
・労災保険法には調整規定があるので、例えば、労災から休業補償給付を受 けた場合は、加害者から休業補償をもらうことはできません。
自賠責保険とは、交通事故による被害者を救済するため、加害者が負うべき経済的な負担を補てんすることにより、基本的な対人賠償を確保することを目的としており、原付を含むすべての自動車に加入が義務付けられています。
なお、無保険車による事故、ひき逃げ事故の被害者に対しては、政府保障事業によって、救済が図られています。 自賠責保険の特徴
1.強制保険制度
・原付を含むすべての自動車は、自賠法により自賠責保険に入っていなけれ ば運転することはできません。
2.最低保障の担保
・1つの事故あたりの保険金額を制限することなく、一事故に複数の被害者 がいれば、1人の被害者の支払限度額まで補償が受けられます。
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ex. 運転者Aと同乗者Bが負傷した場合、A、Bそれぞれが120万円
の限度額となります。
・また、加害者が複数いる事故の場合、保険金額を複数倍した額が限度額
となります。
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ex. Xの車両とYの車両の過失によって、Zの車両の運転者Aが負傷
した場合、Aの支払限度額は240万円となります。
3.被害者からの直接請求の制度
① 被害者は加害者の同意を得ることなく、加害者の加入している保険会社 に直接、必要書類を添えて損害賠償の請求をすることができます。
② 被害者は、当座の出費(治療費等)にあてるため、診断書を添えてとり あえずの保険金(仮渡金)を請求できる制度があります。
4.重過失減額の制度
・交通事故の発生において、被害者に重大な過失があった場合にのみ減額さ れます。
また、被害者に重大な過失がある場合であっても、加害者に過失がある限
り、被害者に有利な減額割合となっており、手厚い保護が受けられます。
・任意保険では、過失割合に応じて賠償額が減額されて、「過失相殺」が適 用されますが、自賠責保険の場合は、「重過失による減額」といいます。
・重過失減額の基準
傷害 | 70%未満の過失 | 減額なし |
70%以上100%未満の過失 | 20%の減額 | |
100%の過失 | 無責で支払いなし | |
死亡・後遺障害 | 70%未満の過失 | 減額なし |
70%以上80%未満の過失 | 20%の減額 | |
80%以上90%未満の過失 | 30%の減額 | |
90%以上100%未満の過失 | 50%の減額 | |
100%の過失 | 無責で支払いなし |
5.損害賠償の対象を人身事故に限定
・自賠責保険は、自動車の運行で他人を死傷させた場合の人身事故による損 害について支払われる保険で、物損事故は対象になりません。 自賠責保険の補償内容
1.障害による損害
・被害者1名について、120万円
・障害による損害は、治療関係費、文書料、休業損害および慰謝料が支払わ れます。
2.後遺障害による損害
・被害者1名について、75万円(第14級)~3,000万円(第1級)
・神経系統の機能や精神・胸腹部臓器への著しい障害で、介護を要する障害 の場合は、3,000万円(第2級)ないし4,000万円(第1級)
・後遺障害による損害は、障害の程度に応じて、逸失利益および慰謝料等が 支払われます。
・逸失利益とは、後遺障害がなければ得られたはずの収入のことです。
3.死亡による損害
・被害者1名について、3,000万円
・死亡による損害は、葬儀費、逸失利益、被害者および遺族の慰謝料が支
払われます。
4.死亡するまでの障害による損害
・被害者1名について、120万円
・障害による損害の場合と同じです。 自賠責保険が支払われない場合
1.100%被害者の責任で発生した事故(加害者に責任がない場合)
・加害者が次の3条件をすべて立証した場合は、加害者に責任がないことに なります。
① 自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと
② 被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと
③ 自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったこと
2.被害者が自損事故で死傷した場合
3.自動車の運行によって死傷したものではない場合
4.被害者が「他人」ではない場合
・自賠責保険は、事故を起こした本人には適用がないということです。
・他人とは、運行供用者および運転者以外の者を指し、それら以外の者であ れば、妻、子、その家族等も他人となります。
5.保険契約者または保有者および運転者の悪意によって損害が生じた場合の 加害者側
・悪意とは、殺人や傷害を目的とした明白な故意を指します。 保険金の請求方法
加害者 | 被害者 | |
本請求 | 加害者がまず被害者に損害賠償金を支払ったうえで、その領収証など必要書類を添えて保険金の請求ができます。 実際に被害者に支払った金額についてだけ請求できます。 | 加害者の加入している保険会社に直接、診療報酬明細書等必要書類を添えて損害賠償額の請求ができます。 |
仮渡金 | 請求できません。 | 当座の出費をまかなうために、前払い金として次の金額を請求できます。 ① 死亡の場合:290万円 ② 障害の場合: その程度に応じて5万円、20万円、 40万円 |
1.任意保険とは、各保険会社が売り出している自動車保険で、加入は自由です。
しかし、多額の賠償責任が生じる現在は、自動車を所有あるいは運転している人の多くが加入しており、対人賠償も無制限というのが当たり前になっています。
2.任意保険の対人保険の保険金額は、傷害・後遺障害・死亡の区別なく、人身事故による損害のすべての合計額に対するものです。
この点、傷害・後遺障害・死亡ごとに保険金額が定められている自賠責保険とは異なります。 任意保険の種類
1.賠償責任保険
① 対人賠償保険
・交通事故により他人を死亡、負傷させたときに、自賠責保険の限度を超え る部分について支払われる保険です
② 対物賠償保険
・交通事故により他人の車や建物などを破損させた場合など、他人に物的損 害を与えたときに支払われる保険です。
2.傷害保険
① 人身傷害保険
・交通事故により自分が死亡、負傷した場合などに、自分に過失がある場合 でも、その過失分を含めた補償額が支払われる保険です。
② 搭乗者傷害保険
・交通事故により契約車に搭乗中の者(運転者や同乗者)が死亡、負傷した ときに支払われる保険です。
③ 自損事故保険
・相手のいない単独事故や加害者に責任がない事故により、運転者や車の所 有者が死亡、負傷したときに支払われる保険です。
④ 無保険車傷害保険
・交通事故により死亡、負傷した場合に、加害者が対人賠償保険に加入して
いなかったり、加入していても充分な額の対人賠償保険がついていない場 合に支払われる保険です。
3.車両保険
・自分の車が、衝突など偶然の事故によって損害を受けた場合に支払われる 保険です。 自賠責保険と任意保険の補償範囲
このようなときに | この保険から支払われる | |
・他人を死亡させたり、ケガをさせたとき | 自賠責保険 | |
・上記の場合で、賠償額が自賠責保険で支払われる額を 超えたとき | 対人賠償保険 | 自動車保険 (任意保険) |
・他人の車やモノに損害を与えたとき | 対物賠償保険 | |
・自分や同乗者が死亡したり、ケガをしたとき | 人身傷害保険 搭乗者傷害保険 | |
・自分の車に損害が生じたとき | 車両保険 |
任意保険の「弁護士費用特約」について
1.任意保険の特約の中で、「弁護士費用特約」(あるいは「弁護士費用等補償特約」)を付けている方は、交通事故にあった場合には、非常に強力な助けになりますので、事前に保険会社に確認して活用すべきです
2.支払われる金額は、弁護士費用等が300万円まで、相談費用が10万円までです。
3.この特約があれば、弁護士だけでなく、行政書士に相談や依頼をされる方も利用ができます。
4.実際の保険会社の保険約款では、次のような条文になっています。
① 弁護士費用等について、
「被保険者等が損害賠償請求を行う場合の弁護士報酬、司法書士報酬、行政 書士報酬、~(中略)~その他権利の保全もしくは行使に必要な手続きをす るために要した費用をいい、法律相談費用を除く」
② 相談費用について、
「法律相談の対価として弁護士、司法書士または行政書士に支払われるべき 費用をいう」
③ * なお、東京海上日動は、平成26年10月1日以降に始期の契約に関し
て、「弁護士費用特約および法律相談費用補償特約」の約款を改定し
ていますので、注意が必要です。