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広島市中区大手町3丁目11-19

親族・相続のQ&A

  身の回りの出来事について、ある程度の決まり事やルールがないと、社会生活は混乱してしまいます。

 そのために法律や判例が存在するのですが、知らないことが多いのが当たり前であり、普通の人は自分に今関係のあるルールの基本的なことしか関心がありません。

  例えば、車を運転する人が道路交通法を勉強して運転免許に合格しますが、ベテランドライバーでも教則本の半分も頭に入っていないでしょう。それでも毎日事故を起こさずに運転していけるからです。

私の事務所の前の交差点は、右折禁止の矢印の交通標識がでっかく設置されていますが、1日で10人以上の人が右折し、運の悪い人は待ち構えた警察官や通りかかったパトカーに反則切符を切られています。
  何か事件や問題が起こったら、時間のロスや反則金の支払いのショックでその標識に関心がいって、改めて昔そんな標識が試験に出たな、と思うわけです

  民法一つにしても、物権(所有権や抵当権)、債権(各種の契約)、親族(結婚や離婚、養子など)、相続(遺産の分割や遺言など)で1043条もあります。一生目に触れることなく過ごす人も中にはいるでしょうが、そのような人は面倒なことは全て人に任せていける幸せな人かもしれません。

  相続や離婚など、いざ自分に問題がふりかかった場合、現在は便利な時代でインターネットで検索すれば、おおよそのことがわかります。
  ただし、専門家がそれぞれの人に合った問題の急所や解決のノウハウをネットで明らかにすることはしないでしょうし、各種講演会で詳細に解説することは不可能です。
  それだから、困っていること、関心のあることに、「まずはご相談を」としているのです。

  先日、先輩行政書士の先生の研修を受けてきましたが、テーマは「相続人46人の遺産分割手続き」というものでした。
  相談者の高齢の女性は、弁護士からも司法書士からも受任を断られ、行政書士に泣きついて来られたそうです。
  アメリカにも相続人が存在するので、当然業務の手間は半端ではなく、クリアすべき法律の項目も多岐にわたります。
  長年相続手続きを放置していた事例にあきれながらも、先生の相談者へのていねいな説明や関連文書の処理、受任の使命感に感服しました。
  その女性も、無料相談会で先生に出会って円満に案件が処理できて、肩の荷がおりたことでしょう。

  問題があるのに先送りすると複雑になって時間と労力がかかるし、、関心のある事例や法律用語について、自分で基本的な知識を集めるのもいいですが、それだけで手続きを進めるのはリスクがあります。専門家と面談して事実の整理、解決への道筋を双方で検討するのは、時間とお金がかかっても意味のあることだと思います。

  ここでは、家族に関するよくある質問で、基本的なことを説明します。


 

親族関係のQ&A

                                                           調停ではなく、いきなり離婚の訴訟        はできないんですか?

  夫とは7年間も事実上の離婚状態が続いているので離婚を決意しましたが、夫は離婚をする気はなく、もし家庭裁判所に調停を申し立てても行かない、と言っています。話し合う意味もなく、時間もかけたくないので、裁判離婚で早く決着をつけたいのですが。


 夫婦の話し合いで協議離婚ができない場合、現在の制度では、訴訟による解決(裁判離婚)を求める前に、家庭裁判所の調停による話し合いでの解決を図ることになっています。これを、「調停前置主義」といいます。

  人事に関する争いや家庭内の紛争に関することは、一般の民事事件のように公開の法廷で争うよりも、可能な限り話し合いで円満に解決する方が望ましい、という考えからです   そのため、調停を経ないで訴えを提起した場合、裁判所は職権で、その事件を家事調停に付さなければならない、とされています。

  ただし例外的に、調停に付すことが相当でない場合(ex.配偶者の生死不明または行方不明の場合、死者に代わり検察官を相手にする場合)は、調停に付さないことができます

*  (ちなみに、生死不明と行方不明は違います。「生死不明」は、生存も死亡も確認        できない状態をいい、「行方不明」は、生きていることは分かっているが所在不明の      ことをいいます。
        従って、単なる別居や行方不明、住所がわからないというだけでは、生死不明には      なりません。しかし、連絡を試みるが全く連絡がとれない音信不通の状態が長期に続      く場合は、生死不明と推認されます。)

   また、民法770条に該当すれば、いきなり離婚の訴えを提起できます(ex.不貞の行        為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、強度の精神病、婚姻を継続し難い重大な事        由)が、質問のケースでは該当しません。

 結局、まず調停を申し立て、夫が出頭しなかったり、出頭したが調停が成立しない場合に、離婚訴訟を起こすことになります。
  家庭裁判所の調停は、手続き自体は簡単で、裁判所の事務の方もていねいに教えてくれますから、本人が申立てることは可能です。
  しかし、こじれそうなケースは精神的負担が大きいので、親身になって話を聞いてくれる弁護士に相談する方が無難です。

   なお、一般には少ないですが、審判離婚というものがあります。
これは、家庭裁判所が調停に代わる審判として職権で行うものであり、調停の当事者が申立てをすることはできません。
 判例としては、妻が離婚調停を申し立てた事案で、夫が調停期日に出頭しないために調停不成立となったが、両者の婚姻関係が既に破綻しており、夫がいたずらに拒否的態度をとっているとして、離婚を認める審判をした事例があります。
  こういった事例では、結果的に、裁判という時間と労力をかけなくてすんだということになります。



 2  協議離婚しても、財産分与や慰謝料は請求できますか?

  夫と5年間結婚していましたが、夫の暴力がやまないので半年前に話し合って協議離婚しました。子供がいなかったので何も取り決めはしていません。
  ところが、私の友人から「夫の方が悪いのに、お金を一切もらわずに別れるのはおかしいんじゃないの」と言われました。
  今から、夫に財産分与や慰謝料を請求できますか。


   夫の暴力・暴言が原因で婚姻関係が破綻し、妻に落ち度がないことを前提にすると、離婚後2年間は財産分与を請求できる(民法768条)し、離婚後3年間は不法行為として慰謝料を請求することができます(民法724条)

  財産分与は、5年間の夫婦としての財産形成、離婚後の生活確保、離婚による精神的苦痛の慰謝料の意味があるとされていますので、奥さんの財産形成への貢献などがありますから財産分与請求ができます。
  また、相談のような夫の方に責任がある場合は、財産分与を得たから慰謝料請求権が消滅するものではなく、別個に不法行為を理由として、離婚による慰謝料を請求することができます。
  日常的に暴力をふるうような元夫は、奥さんが言ってもすんなりお金を支払うことは期待できないので、請求期限が到来しない間に家庭裁判所か弁護士に相談すべきです。

  ちなみに、離婚前の請求と離婚後の請求では手続きが異なります。
  ①  離婚前の請求
        これから離婚を求める離婚等請求訴訟で、離婚、離婚慰謝料、財産分与を一括して         申し立てて解決を図ります。

  ②  離婚後の請求
        財産分与は、家庭裁判所に家事調停を申立てて話し合いますが、慰謝料請求は、簡         易裁判所または地方裁判所に慰謝料請求訴訟を提起しなければなりません。

   仮に、もう少し穏便な形で、協議離婚や財産分与に夫が協力してくれる場合は、協議離婚をする前に、公正証書で財産分与の取り決めをした協議書を作成します。



  離婚後の養育費はどうやって決めたらいいですか?

   結婚5年で3歳の長女がいますが、夫と話し合って離婚することになりました。2人とも調停をする気はなく、円満に離婚届を提出する予定で、妻の私が長女を引き取り、養育費の取り決めをしておこう、ということになりました。
  誰にも相談していないので、月々の養育費をいくらに決めればいいかわかりません。
  夫はサラリーマンで年収は500万円、私は100万円です。


  協議離婚で、何も決めない、決めても口約束、2人だけで簡単な文書を交わす、ということは実際にあることですが、子供のために長期的な支払いになるため、もう少し慎重に事を進めた方がいいと思います。

  (1)  養育費の基準

  養育費の目安自体を探すことは簡単です。インターネットで「裁判所 養育費算定」と検索すれば、裁判所が作成した「養育費・婚姻費用算定表」をダウンロードすることができます。

  この「算定表」は、子の人数と年齢に応じて表が9つあり、たて軸は養育費を支払う側(義務者)の年収、横軸は支払いを受ける側(子を引き取る人)の年収が表示され、標準的なケースで、簡易迅速に算定することができます。
                           ⇓
  相談例を当てはめると、表1「子1人表(子0~14歳)」が該当し、たて軸は給与の500、横軸は給与の100を選択し、その枠を右と上にのばした線の交差する欄は「4~6万円」の枠内になっています。
  標準的な養育費は、4~6万円で、夫婦間で、その間の金額で決めることが可能です。

 ( ただし、夫婦間にはいろいろな事情、特別な事情があるわけですから、実際に決める額が        算定表の枠内の額と必ず一致するとは限りません。)

 (2) 「絵に描いたモチ」の危険性

  2人で簡単に決めた約束には、次のようなリスクがあります。

   ・夫が気が変わって、1年で支払いが途切れたらどうする?
   ・夫が、失業して収入がなくなった、病気で少なくなったらどうする?
   ・夫が事故や病気で亡くなった場合はどうする?
   ・夫が再婚した、あるいは妻が再婚した場合はどうする?
   ・子供が私立高校、大学へ進学したい場合はどうする?
   ・子供が重い病気になって、治療費が高額になったらどうする?

  など、他にも様々な状況が想定されます。

  これらを考えれば、一度専門家に協議書の文面を相談して公正証書にするか、家庭裁判所で
調停調書を作成する方が、子供のためにも安心です。

 

 4  婚約破棄された場合、損害を請求できますか?

  私は職場の男性と婚約しましたが、結婚式の10日前に突然、「性格が合わないから」と言って、一方的に婚約を解消されました。
  結婚式の招待状も発送しているので、私も両親もショックですし、これまでの婚約指輪や結納、式場費用、新居の準備費用などのことや職場も退職してしまったので、今後どうすればいいか心配です。
  私には落ち度はないと思っているので、相手の男性に損害を請求したいのですが可能でしょうか。


  婚約が成立しており、相談者の女性に落ち度がないということを前提として、相手の男性には婚約破棄の合理的な理由はなく、約束違反の責任があるといえます。
  従って、かかった費用や精神的な慰謝料は相手方が負担することになります。

  ①  結納や婚約指輪は、法律に特に規定はありませんが、結婚が不成立のときは返すこ   とになります。
    しかし、一方にだけ責任がある場合は、その男性は返してもらえませんし、責任のな   い女性は、原則通り返してもらえます。

  ②  婚約解消によって生じた損害は、責任のある相手が負担すべきです。具体的な費用   としては、次のようなものが考えられます。

   結婚式場・新婚旅行のキャンセル料
   新居の入居費用(敷金・礼金等)、家具・電化製品購入費用
   結婚式中止通知の印刷・郵送料 等

  ③ その他、結婚に際して、退職した不利益についても、損害を請求することが考えら   れます。 

  ④  精神的損害に対する慰謝料を請求できます。
  慰謝料の算定には、年齢・交際期間・相手方の年収などが考慮されますが、実際の例で   は、予想以上に低い金額の方が多いようです。


 

 

相続関係のQ&A





                                                           遺言執行者は必要なんですか?

  私は妻と二人暮らしで子供がいないので、妻が1人になったときのために遺言を作りました。しかし、私の兄弟もいるので親族が口をはさみ、遺言書通りに遺産分割がされないのでは、と心配です。妻のために、何か方法はありますか。


 遺言で注意しなければならないのは、遺言執行者がいない場合は、相続人が相談して遺言の内容と違う遺産分割ができる可能性があるということです。相続人である親族が、奥さんに圧力をかけてやり直しを迫ることもありえます。
(気の弱い奥さんが圧力に負けて、兄弟の作成した遺産分割協議書に実印を押してしまえば、形式的に遺言を相続人全員が見た上で異なる分割協議に全員で合意したことになります)
  ですから、遺言を作成したから、全て安心とはなりません。

  民法は、「遺言者は、遺言で、1人または数人の遺言執行者を指定し、またはその指定を第三者に委託することができる」(1006条)としていますから、遺言執行者をおくことは義務ではないし、実際に指定していない遺言も多いのです。

  遺言執行者をおくメリットは、遺言通りの遺産分割を行うことができること、その執行者の相続財産の処分などの業務遂行に対して相続人が 妨害できないので、遺産分割がスムーズに実行されること、また遺言作成者名義の凍結された預金口座も相続人全員の印鑑が必要ではなく、遺言執行者の印鑑で凍結を解除できることなどがあります。

  遺言執行者を検討した場合に、注意しなければならないこと

①  遺言で遺言執行者を指名しても、その指名された人は、就職するか辞退するかは自由ですから、了解なしに勝手に決めるのはリスクがあります。

②  未成年者と破産者は、遺言執行者にはなれません。
平成11年の改正で、成年被後見人と被保佐人が欠格事由から削除されたので執行者になることができますが、当然意思能力がなければその遺言の執行行為は無効となるし、被保佐人の執行行為が訴訟行為を伴う場合は取消の対象となるので、できれば避けるべきでしょう。
   なお、信託銀行などの法人も、遺言執行者になることができます。

③  ②のように、未成年者・破産者以外は誰でもなれるわけですから、親族やその他の利害関係者も遺言執行者になれますが、わざわざトラブルの元になるようなことはしないほうがいいでしょう。

④  遺言執行者に対して多額の報酬を支払う場合がほとんどです。
遺言で、遺言執行者を無報酬と定めることもできますが、業務の大変さを考えれば、指定された人は無報酬であれば断るでしょう。
  信託銀行であれば、遺言保管料の他に、最低報酬額は100万円以上かかります。

⑤  いくら専門知識があり信頼できる人でも、高齢で病弱のため遺言作成者より早く亡くなる可能性が高い人は、亡くなった時に改めて、家庭裁判所に選任の請求をする必要がでてくるので、面倒なことになります。

    結局、遺言執行者に適任なのは、高齢でない相続手続きの実務に詳しい弁護士・行政書士・司法書士または信託銀行になるかと思います。



公正証書遺言の証人はどうやって選べばいいんですか?

  私も年をとってきて、家族のために遺言を作ろうと考えています。公正証書遺言が紛失や書換えのおそれがないことはわかったのですが、公証役場へ行ったり、証人2名が必要だということで、何となく気が重くなります。特に、証人は誰になってもらえば一番いいのかよくわかりません。
  私には妻と子と私の兄弟がおり、子には配偶者がいます。


  遺言は、紛失や書き換えのおそれのない公正証書遺言がいいとよく言われますが、いざ本気で遺言を検討したときに、公証役場へ行ったり、報酬を払ったり、証人2名が必要だったり、いろいろ面倒ではないかと心配になります。

  結論から言えば、守秘義務のある専門家である弁護士や行政書士などに、最初の段階から相談や依頼をすれば、遺言内容のチェック、公証人との調整、公証役場への同行、そして証人にもなってくれますから、全てが解決します。

  (1)  念のため、民法974条にある「証人および立会人の欠格事由」で、証人として不適格と      なる人を見てみましょう。


  ①  未成年者

    ・未成年者は、法定代理人の同意があっても、証人・立会人になることはできません。

  ②  推定相続人および受遺者並びにこれらの配偶者および直系血族

    ・推定相続人とは、その遺言者が死亡したときに、相続人となる予定の人です
    ・受遺者とは、その遺言によって財産をもらう人です
    ・直系血族とは、子・孫・父母・祖父母などです
                                        ↓
      質問のケースですと、遺言者の兄弟は遺言作成時に第一順位の相続人でなければ証人・立       会人になることはできますが、子の配偶者は、推定相続人の配偶者なので証人・立会人に       なれません。

  ③  公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および使用人

    ・公証人の関係者のことですが、ここでいう公証人はあくまでその遺言の作成にかかわる公        証人です。

   (2)  また、民法で規定されていない人でも、事実上の欠格者として、証人に適さない人がい    ます。


  ①  署名することができない者

    ・証人は遺言に署名することが必要だからです。

  ②  遺言者の口授(公証人への読み聞かせ)を理解できない者

  ③  法定代理人(親権者・成年後見人)・保佐人

    ・これは、欠格者となるかどうかは争いがあるので、避けた方が無難です。

  (3)  その他

  ① 推定相続人以外で利害関係がない親族であっても、親族間で信用がない人は避けるべき         でしょう。

  ② 親族・友人・知人に限らず、口が軽く秘密をしゃべる人


  *  なお、遺言執行者は、判例は、利害関係を有する者でなければ、証人となることができ         る、としています。


3  身寄りのない人が死亡した場合、財産はどうなるんですか?

   私は夫が死亡後、体が不自由となり子供もいないので、土地・家屋を売却して、介護付老人ホームに入居しています。預貯金もあり今は何不自由なく過ごしていますが、私が死んだ後は、預貯金がどうなるのか心配です。
  亡夫も私も両親はすでに他界し、私には兄弟はおらず、夫の兄弟はまだ健在です。


  子供がいても離れて住んでいれば、孤独死が増えている現在、恵まれた環境で老後を過ごされているようです。

  まず、本当に相続人がいないのかどうか除籍謄本等で確かめる必要がありますし、現在の財産を整理して確認することが重要です。
  両親も他界、子どももいない、自分の兄弟もいない、亡き夫の隠し子もいない、となれば、亡き夫の兄弟は相続に関しては何の関係もありませんから、その遺産は最終的には国庫に帰属することになります。

  もう少し順を追って言えば、相続人が明らかでないときは、相続財産は相続財産法人とすることになっています。(民法951条)権利者のいない財産はありえないので、相続人が不明のときは、その法人が権利の主体であるとします。
  この場合、家庭裁判所の選任によって管財人がおかれ相続人を探します。

 この捜索によっても相続人がいないときは、その遺産は国庫に帰属することになります。
                                                                                                      (民法959条)

  ただし、ご本人の療養看護につとめた人がいるとか特別の事情がある場合は、この特別縁故者の請求があれば家庭裁判所は清算後の遺産を与えることができます。

(*現実には、法律通りにいかず、宙に浮いた財産のケースもあります)

  ここまでは、財産について法律のとおり進んでいきますが、ご本人の生前の希望は一切考慮されないことになります。
  ご本人に何らかの希望があれば、遺言書を作成しておくことが絶対に必要です。

  例えば、亡夫と自分の死後の供養をお寺にお願いする、特別世話になったAさんに財産の一部を遺贈する、残りの財産は公益法人や病院に寄付するなど、人生の最後に自分の気持ちが実現できる方法を検討するのがいいと思います。


 相続で、除籍謄本などは、どういうものをそろえるのですか?


  私の父が先日死去し、銀行で父の預金を引き出そうとしたら、口座が凍結されていました。窓口の方は、「亡くなったお父様の出生から死亡までがわかる除籍謄本等と相続人全員の同意のある書類一式を提出して下さい」と言われました。
  除籍謄本など請求したこともないし、本籍を変えていたり、再婚しているので、一体どういう戸籍を請求して提出すればいいかわかりません。



  戸籍の種類は、現在戸籍、改製原戸籍、除籍謄本といろいろあり、役所への請求の仕方も面倒ですが、詳しい説明はさておき、とにかく出生から死亡までの戸籍を急いで取り寄せなければなりません。
  亡父が転籍(本籍を他の場所に移す)したことと、再婚していることがポイントです。すべての謄本をそろえて相続人を確認し確定されなければ、銀行は預金の引き出しには応じてくれません。

  戸籍を見る基本的知識として、次のことを理解しておきます。

     ⅰ  戦後の法律で、戸籍は、原則として一組の夫婦とその夫婦と氏を同じくする子供が単位          となっています。(戦前の家制度からの改正)
     ⅱ 除籍謄本とは、婚姻、養子縁組、死亡などにより、在籍者が誰もいなくなった戸籍のこ          とで、戸籍簿に保管されていたものが、除籍簿に移って保管されているものです。
     ⅲ 電子化された戸籍は、平成7年から全国で順次実施されており、縦書きから横書きに変            更され、戸籍謄本は「戸籍の全部事項証明書」、戸籍抄本は「戸籍の個人事項証明書」          と名称も変更されました。
     ⅳ 転籍とか改製された戸籍には、その前に記載されていた人がすべて新戸籍に転記される          わけではないということを知っておきます。
     

  わかりやすくするために、亡父Aの出生から時系列で必要な謄本を追っていきます。
  ① 昭和20年  大阪で出生

  ② 昭和45年  先妻Bと結婚して両親の戸籍から除籍、数年後長男C誕生
  ③ 昭和50年  離婚して先妻Bが除籍

  ④ 昭和52年  本籍を大阪から広島に転籍
  ⑤ 昭和53年  後妻Dと再婚、その後長男E、長女F誕生
  ⑥ 平成10年  長男Eが結婚して両親の戸籍から除籍
 
 
 ⑦ 平成15年  戸籍の電子化で改製
  ⑧ 平成16年  長女Fが結婚して両親の戸籍から除籍
 
 ⑨ 平成25年  父A死去

       現在、Aの両親は他界し、先妻と子供C,後妻と子供E,Fは健在である。
               ⇓
  (必要な戸籍)
  ❶  除籍謄本(昭和20年の出生~昭和45年の結婚で除籍されるまでの戸籍)
   *除籍謄本は、婚姻・養子縁組・死亡によって最終的に誰もいなくなった戸籍をいいま            すが、この謄本で両親と前の本籍、出生が確認できる

  ❷  転籍前の戸籍(昭和45年の結婚、50年の離婚、52年の広島への転籍までの戸籍)
         *この戸籍で、先妻Bと長男Cの存在が確認できる

  ❸  改製前原戸籍(昭和52年の転籍から平成15年の戸籍の電子化による改製までの戸籍)
         *この戸籍で、後妻D、子供E,Fの存在が確認できる
         *(転籍後のこの戸籍では、離婚により除籍された先妻Bと長男Cは記載されていない               し、父Aの身分事項欄にも、先妻Bとの婚姻・離婚事項は移記されません)

  ❹  現在戸籍(平成15年の電子改製から平成25年の死亡までの戸籍)(全部事項証明書)
         *この戸籍で後妻D、長女Fの存在が確認できる
         *(改製後のこの戸籍では、改製前に結婚して除籍された後妻の長男Eは、記載されま              せん)

         ⇓
    この相続についての相続人は、後妻D、その子EとF、先妻の子Cですが、もし❹の現在戸     籍だけで判断してしまうと、後妻Dとその長女Fだけとなり、長男のEと先妻の長男Cがも     れてしまいます。

    また、実際には、相続人全員の住民票と相続関係図を添付して提出します。


 5 遺言書記載の財産とは別の財産が見つかったらどうなりますか?

  父が亡くなり、自筆証書遺言が存在したので、検認手続きを経て遺言通り母と兄弟2人の3人で相続しました。
  ところが、2年後に誰も把握していない父の通帳が見つかりました。2年前と異なり、その預金財産について兄弟でもめています。どうしたらいいでしょうか。



  相続時の遺産分割は、全員が遺言の内容を確認し納得した上で遺産分割に同意したのですから、それをくつがえすことはできません。
  新たに見つかった預金のみについて、分割協議をすることになります。

  遺言によって指定されていない遺産については、改めて遺産分割協議が必要になるので、本来なら、遺言者が「遺言者は、前○条の財産を除く遺言者の有する一切の財産を、いずれも長男○○○○に相続させる」と明記しておけば、もめることがなかったはずです。

  3人の協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるしかありません。
質問のケースは、遺言や遺産分割協議書に書かれていない行き先未定の財産がある場合ですから遺産分割調停手続きの利用が可能です。

  ちなみに、遺言や遺産分割協議書で遺産全部の行く先が決まっている場合は、この分割調停手続きを行うことはできません。
  また、遺言や遺産分割協議が無効だという主張があり、相続人間で争いになった場合には、無効かどうかを決める民事裁判を先に行って、遺産分割手続きができるのかどうかを決定させる必要があります。


 遺留分を侵害している遺言はどうなりますか?

  先日父が亡くなり、自筆の遺言が見つかりました。相続人は、母と姉と長男の私の3人です。検認手続きを経て確認したところ、遺言の内容は、母(夫の妻)に土地・建物・預貯金全てを相続させる、というものでした。
  私たち子供2人は現在独立して、特別に困っているわけではありませんが、母が弱ってくれば面倒も見るつもりだったので、一切財産をもらえないのは納得できません。
  遺留分ということを聞いたことがあるのですが、どうすればいいでしょう。
相続財産は、土地・建物で4,000万、預貯金は2,000万です。


  まず、結論から言うと、父が作成した遺言の内容が遺留分の規定に反する場合でも、遺言が無効にはなりませんが、遺留分権利者である子供から減殺請求があれば、これに応じなければなりません。従って、最低限の財産はもらえることになります。

  相続が開始すれば、遺言がなければ民法の規定にある法定相続分に従い配分されます。遺言があれば、遺言者の指定した相続分が優先し、法定相続分の規定は適用されません。
  原則として、遺言者は自分の希望を反映した配分を書くことができますが、どんな配分でも法律上問題がない、ということではなく、民法の遺留分に反することはできません。
  
  遺留分とは、民法で定められている一定の相続人が最低限相続できる財産のことをいいます。(民法1028条)
  具体的な、法定相続分と遺留分の割合は、下のようになります。

    ① 法定相続分
              配偶者と子             配偶者  2分の1、子           2分の1
              配偶者と父母          配偶者  3分の2、父母        3分の1
              配偶者と兄弟姉妹    配偶者  4分の3、兄弟姉妹  4分の1

    ② 遺留分割合 (全体財産に対して)
              配偶者のみ             2分の1
              子のみ                   2分の1
              配偶者と子             2分の1
              父母のみ                3分の1
              兄弟姉妹                なし        (*兄弟姉妹には、遺留分がないことに注意!)

  質問のケースでは、
    ① 遺言がない場合、法定相続分は、母3,000万、子(姉)1,500万、子(弟)1,500万と            なります。
    ② 遺留分は、配偶者と子の場合、全体財産の2分の1ですから、母1,500万(4分の1)、
          子(姉)750万(8分の1)、子(弟)750万(8分の1)となります。

         結局、子供2人は、原則として1年以内に裁判所に対して減殺請求をすれば、750万づつ          は配分してもらえます。
         (残りの4,500万は、母に分配されます)

   亡くなった父は、何かの理由で奥さんに一切の財産を配分したかったのでしょうが、遺言でいくらそういう事情を書いたとしても、また、遺言で遺留分減殺請求をしないよう書いたとしても、法的拘束力はなく、子供2人が納得しなければ、希望は実現されないし、余計な労力を使うことになります。

  遺言を作成するときは、相続人の遺留分を十分に調べて、出来れば遺留分に相当する財産だけは相続させる、という内容にすべきです。

  (なお、子供2人が遺言に納得しているのであれば、減殺請求もしないわけで、遺言通り母が
     全財産を相続することになります)  

 

            

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