広島で相続手続き、遺言書作成、協議離婚のご相談なら、中区大手町の勝部行政書士事務所までどうぞ
広島市中区大手町3丁目11-19
082-241-8610
遺言書の種類と長所・短所について説明いたします。
民法で、遺言の種類は7種類ありますが、実際の場面でよく出てくるのは、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類です。
遺言を検討する、あるいは書面にする場合には、正確に形式や長所・短所を
理解しておく必要があります。遺言の形式は厳格であることをまず頭に入れておくことが重要です。
① 自筆証書遺言
・遺言者が遺言書の全文・日付・氏名を自署
してこれに押印する方式です。
(注意点)
1.遺言者の死亡後に、家庭裁判所の検認を受ける必要がある。
2.手書きであることが条件で、ワープロ・録音・ビデオは無効となる。
3.日付は年月日を特定し、○年○月吉日という例は無効となる。
4.押印は、実印でなくても、認印でも可能。
② 公正証書遺言
・遺言者が公証人に対し、遺言内容を口頭で伝え(口述)、公証人が聞いた内容
を筆記して作成する方式です。
(注意点)
1.家庭裁判所の検認は不要。
2.原則として、本人が公証役場に出頭する必要がある。
3.証人2名の立会いが必要。
4.手数料等の費用がかかる。
③ 秘密証書遺言
・遺言者が自己または第三者が作成した遺言証書に署名押印し、市販の封筒に
封をし、公証人が証人とともにその封筒に署名押印をする方式です。
・秘密証書は、遺言者の「全文」と「日付」の本人の自署が要求されていない
点が、自筆証書との大きな相違点です。
(注意点)
1.家庭裁判所の検認が必要。
2.証人2名が必要。
3.署名は、自筆であることが必要。
上記の3種類の遺言の特徴は、そのまま長所・短所となりますので、表にすると次のよ
うになります。
ご自分の事情と照らし合わせて検討する必要があります。
遺言の種類 | 長所 | 短所 |
自筆証書遺言 | 誰にも知られず、1人で作成することができる 何度でも簡単に作り直すことができる | 死後、家庭裁判所の検認が必要 破棄・改ざん・隠匿のおそれがある 遺言の有効性が争われるおそれがある 紛失や発見されない場合がある |
公正証書遺言 | 遺言書としての形式が保証されているので、形式の不備が生じる心配がない 公証人が関わるので、内容が法的に確実で、改ざん・変造の心配がなく、無効とされる心配が少ない 公証役場に20年、原本が保管されるので、存在の検索が可能 死後、家庭裁判所の検認が不要 目や耳、手が不自由な人、病気やけがで自署が不可能な場合でも作成できる | 費用がかかる (記載された相続財産によって異な
|
秘密証書遺言 | 遺言内容を人に知られない 偽造・隠匿の心配がない 遺言の内容は、ワープロや代筆でもよい (署名は自筆が必要) | 死後、家庭裁判所の検認が必要 費用がかかる 証人2名が必要 遺言の内容そのものに不備が生じる可能性がある |
総合的に見ると、費用や出頭の手間がかかっても、後々の紛争を避ける意味
から、公正証書遺言が優れていると思います。
昔から遺言をテーマにしたドラマや小説では家族間の骨肉の争いが定番になっており、裁判で多数の紛争事例も見られますので、あまりいいイメージがないかもしれません。
ただよく見てみると、もめているのは、圧倒的にいわゆる自筆証書遺言が多いのがわかります。
また、大金持ちの資産家の家庭がテレビに映し出されるので、自分とは関係のない世界で、「資産家は大変だなあ」、と思うだけでしょう。
最近は少し様相が違ってきました。特に、金融機関が財産管理・生前贈与・遺言・節税対策の無料セミナーを頻繁に開催しており、各種サービスをわかりやすく説明するようになりましたから、一般家庭での関心も以前より高くなってきました。
特に、遺言を検討した方がいい、という具体的なケースが目に入ると、自分にも当てはまる、という気持ちになります。
しかし実際に遺言を作成するとなると、係争事例をみると遺言が紛争の種になり、公正証書遺言ですら公証人に口述した時の遺言能力までけちをつける相続人もいるくらいです。
世の中でこれほど遺言について紛争が起こるぐらいなら、遺言者が生前に力関係が維持されているうちに、皆に公言して長期的に贈与や寄付を実行しておけばよかったのにと思うくらいです。
特に自筆証書遺言については、短所が目につきます。
主な懸念材料を見てみます。
1.家庭裁判所の検認
① 検認申立てをしてから検認済通知や証明書を交付されるまで、長い時間が かかります。
② 裁判所の検認と言っても、遺言が存在しその形式的なことを確認するだけ で、検認を受けたことで遺言書の有効性を確認したり、真正に成立したと 推定されるわけではありません。
③ 従って、遺言の効力を争う訴訟が起こる可能性はなくなりません。
2.紛失・隠匿
① 本気で遺言書を作成した故人は、無雑作に見つかる場所に保管することは なく、これによって遺言書が発見されないということもあります。
② 仮に、自宅の中や他所に預けておいた遺言書が、相続開始後10年後ぐら いに発見されたとしても、ご家族は新しい生活が始まっており、遺言書自 体に関心がないか生活を混乱させないため、無視されるかもしれません。
③ 財産分与で不利な扱いをされた相続人が、たまたま発見し開封して処分・ 隠匿したとしても、処分されれば闇の中です。
3.遺言書の内容
① もし遺言書の決まり事を知らず気ままに書いていれば、意味不明で文言に 疑義が生じるおそれがあり、かえって関係者を混乱させ手間をかけさせる だけになります。
② ある特定の相続人に特定の財産を与える場合に、「遺贈する」、あるいは 「相続させる」と記載した場合で、どの点で同じ扱いになり、どの点で差 が出るか、また「任せる」という表現は避けるべきなのか、など文言の記 載には細心の注意を払った方がいいでしょう。
ex.不動産をAに「遺贈する」であれば、遺言執行者が任務として不動産の 名義変更に関わりますが、「相続させる」であれば、遺言執行者は名義変 更の手続きに関わらないで、取得者のみで手続きが可能です。
③ 不動産の地番が間違っていれば争いになるでしょうし、うっかりして金融 機関の預金口座番号が明記されていなければ、銀行は預金引き出しを拒否 するでしょう。
④ 文章の書き損じは全文を最初から書き直す方がいいですが、その手間を惜 しんで、決まり事を無視した加除・訂正を行えば、せっかく作成した遺言 書も無効になってしまいます。
⑤ 裁判所は、遺言者の意思を尊重するため、遺言の趣旨の全体的解釈によ り、なるべく遺言者の意に沿った扱いをする姿勢をとっていますが、それ
でも、遺言者が秘密を保つために1人で作成した遺言書は非常に危ないも
のとなり、相続人の争いの元になりかねません。
⑥ 遺言の本来の趣旨である、相続手続きが円滑に進み、円満な相続が実現さ れるために、遺言書を作成する場合は、専門家と一緒に進める方がいいで しょう。